情報として確かに知っていた。




       ・・・知ってはいたけど・・・。













                          *花* 


















       雄沢 葵




       コイツが今の俺の仕事対象者。




       『面白そうだから暫く見てろ』って・・・


       相変わらずいい加減な上司だ。


       そんな理由で転校させられるなんて。



       まあ確かに『面白そう』ではあるけど。








       あ、またこけてる。


       どうやったら何も無い所でこけるんだ。


       あ、今度は人とぶつかってる。

       雄沢の方だけ派手に頭ぶつけたな。


       というか、角を曲がる度に人とぶつかるってどんなだよ。

       他の奴と一緒に歩いててもアイツだけぶつかってるし。


       あ、また。

       今度は大量に荷物(多分授業で使う資料か何か)持った奴とぶつかってる。

       ・・・物全部被ってるし。しかも頭から。

       で、さらに運ぶの手伝わされる、と。




       雄沢を調べた時に、知ってはいた。

       『ついてない不幸なやつ』って事は。


       でもさ、


       此処までとは思わなかったよ。


       ただ周りよりも少しついてないだけかと思ってたけど。

       少しどころか物凄く、だな。


       見てて同情するけど、周りの奴らは皆慣れてるみたいだな。





       「ねえ、砂時君。」


       「何?」



       俺の周りにいる女子が話しかけてきた。

       休み時間の度に来るけど、はっきり言ってウザイ。

       普段の俺だったら何とも思わないけど、今は一応仕事中だ。

       仕事の邪魔。ウチの上司、怒ると煩いんだよなあ。




       「砂時君って、雄沢と仲良いの?」


       「え、何で?」


       「だって昼休みのとき雄沢と一緒に、何処か行ってたじゃない?」


       「ああ、せっかく隣の席だから、昼食と校内を案内してもらったんだよ。」


       嘘だけど。


       「へー。」「そーいえば雄沢って隣だったっけ。」


       「・・・みんな雄沢のことは呼び捨てなんだ?」



       「うん。だって雄沢だし。




       いや、どんな理由で?



       「・・・へぇ。」


       「ウチのクラスじゃ、雄沢のこと君付けしてる人は居ないよ。」


       「・・・何で?」


       「えー、何でって言われてもねぇ?」「ねぇ。」


       「ウチのクラスって男女仲良いしー。それに雄沢って見てて面白いし。

       「そうそう、あの不幸さが。見て皆で笑ってたら、いつの間にかクラス皆に馴染んでた?みたいな。」

       「雄沢は校内でも有名人だよ。不幸すぎて。




       ・・・へー。有名人ねー。

       まあ、あの体質(?)じゃ、ねぇ。

       ある意味、人気者?





       「何、人の話してんだよ。」


       ん?



       「あ、噂をすれば何とやら。


       「噂って・・・。どんなだよ。」


       「えー?雄沢って不幸だよねーとか、ついてないよねーとか、寧ろ憑いてるんじゃない?とか??」




       憑いてるって・・・。




       「お前らな!人のことをぃてっ!!


       ・・・野球ボール?


       「悪い!・・・って、何だ。葵か。」

       「何だって何だよ!教室内で野球をするな!オレが居るんだから!!」

       「認めてるじゃん。」


            あはははははははははは



       ・・・ふーん。

       やっぱ『面白い』ね。

       『雄沢 葵』か・・・。


       見る価値ありそーじゃん?













             報告書


            
雄沢 葵について


            
とにかく不幸。(学校公認)








       「・・・他に書くこと無いんだけど。」







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       初の他キャラ視点。やっぱり猫かぶりな砂時。

       結構楽しかった。葵の不幸さがw

       久しぶりに出したよ、「憑いてる」(笑)