雷



     ピカッ

     「ぎにゃあっ!!」

     「・・・・・・。」


     ゴロゴロ・・・・

     「うあぁぁ!!」

     「うるさいんだけど。」

     「だって、だってぇぇ!!」


     遥は雷が苦手だ。

     少し鳴っただけで叫びだす。

     近くに落ちたときなんて、泣き出すし。


     「別に自分に落ちたわけじゃないんだからさ、雷。」

     「怖いもんは怖いんだよぉっ!」

     「ふうん。」


     そんなもん、かな。


     「それにさ、」

     「ん?」

     「雷って、死ぬじゃん。」

     「・・・・ああ・・・。」


     そっか。だからか。

     遥の父さんが、雷で死んだから。

     俺も遥も小さかったから、詳しいことは聞いていないけど。


     「自分が死ななくても、他の人が死んでるかもしれないから。だから、怖いの。」

     「・・・・・・。」


     ガラガラ ピシャッ

     「ぎゃああぁぁぁっ!!」

     「・・・・。シリアス台無し。」

     そこまでシリアスってわけじゃなかったけど。





     「・・・・・あ。」

     「あ?」

     「家、大丈夫かな。」

     「家?」

     「うん。だって、母さんも雷ダメだから。」

     「あ・・・・・・・。」


     当時小さかった遥がダメなんだから、ね。


     「大丈夫かなあ。家、破壊してなきゃ良いんだけど。」

     「って、破壊!?」

     「ふふふふふっ」


     いや、笑い事じゃないし!

     破壊って何、破壊って!!

     そこまで雷・・・ああ、うん。ダメだろうね。(子がコレなら。)


     「じゃー、今日はもう帰ろっかな。」

     「おー。送るか?」

     「んー、いいよ。どーせ1,2分で着くし!」

     「・・・雷鳴るかもよ?」

     「う・・・い、家までぐらい、大丈夫だよ!」

     「ふーん、そっか。じゃあなー。」

     「うん、じゃーね!!」


     おうおう、雷があってもなくても元気なやつ。

     ・・・叫ぶよりはマシか。






     〜♪ 〜♪

     「ん・・・・・・?」


     暗い・・・?・・・ああ、寝てたのか、俺。

     電話・・・・・・誰だ?

     ・・・・・・遥?


     『・・・もしも、し・・・・・・?』

     「遥?どうした?」

     『母さんが・・・・・ね・・・・・・』



     『 死 ん じゃ っ た の 』



     「・・・・・・は・・・?な・・に、冗談・・・・っ」


     何で。     何で   ?


     『・・・・・・』


        どうして・・・・・・っ

                        なんて



     『 雷 で 』



     俺の言葉じゃないはず 。